設立趣意書
和食は、日本人の精神や風俗・風習を総合的に現す文化である。
そして今や、世界の「和食」、世界の「和食文化」と言っても過言ではない。
「和食文化」は、日本人が基礎としている「自然の尊重」という精神に則り、正月や田植え、収穫祭のような年中行事と密接に関係し、家族や地域コミュニティのメンバーとの結びつきを強めるという社会的慣習として、独自の価値を世界に発信している。
あるときは、『いただきます』『ごちそうさま』『もったいない』という「自然の中で生かされ自然とともに生きている」という想いから出てくる「食べ物を大切にする精神」や、京料理をはじめ器やしつらえ等で四季折々のすばらしさを現す「季節感」を体現するものとして。
またあるときは、食事を共にする家族や仲間、もてなす相手や場を考えるとともに、年中行事とも密接に関連して「しつらえ」や「器」等を整える『もてなし』のこころと美意識として。
そしてまたあるときは、自然の恵みを感じ、旬の食材を大切にする食に対する思想や、素材の持ち味を活かす「出汁」等を使った調理方法によるご飯を中心にした栄養バランスに富んだ健康食として。
しかし、ここで我々は、もう一度足下を見つめ直すべきことに気づいた。
現在の日本では、「和食文化」は喪失の危機にある。自然環境の変化、生活様式の変化や利便性の追求などによる食に対する価値観の変化など、食を取り巻く環境は大きく変容している。さらに、世界各国の料理の普及や家庭における料理の位置づけ、和食文化を担う人材の不足もこれに拍車をかけている。
まさに、平成25年12月のユネスコ無形文化遺産登録は、我々「和食文化」をこよなく大切に思うものに対して、「次世代への継承」や「世界での認知の向上」が喫緊の課題であることを告げるものであり、「和食文化」の主たる要素である文化、芸術、学術、技術、伝承、知恵の集積する京都に託された役割は大きいと言えよう。
このような認識の下、「和食文化」の保護・継承・発展に携わる団体等によるプラットフォーム組織として「京都・和食文化推進会議」を立ち上げ、オール京都で和食の文化を考え、行動することとした。我々は、この「京都・和食文化推進会議」を中心に、「和食文化」を次世代に継承し、世界に広め、ひいては人類の健全な食生活に寄与することを、ここに固く決意するものである。
内外の多くの方々一個人・団体・企業・行政機関が、この意義を深く理解し、またこれに賛同して、同会議に参画されることを期待する。
平成26年11月13日
京都・和食文化推進会議 共同代表
京都府知事 | 山田 啓二 |
京都市長 | 門川 大作 |
ユネスコ親善大使,茶道裏千家前家元 | 千 玄室 |
京都商工会議所会頭 | 立石 義雄 |
「和食」文化の保護・継承国民会議会長,静岡文化芸術大学長 | 熊倉 功夫 |
京都府無形文化財「京料理」保持者 | 髙橋 英一 |